政治学におけるコンピュータ・モデリング

■ Last Modified 2003/04/18 23:00 ■

政治学における Computational Modeling には、比較的多くの蓄積があります。数値計算に基づくシミュレーションがその中心ですが、ここでは近年注目を集めている Agent-Based Modeling(ABM)に関する文献の紹介を行います。ただし、ここよりはリンク「コンピュータ・モデリング」をたどった方が有益かもしれません。

  1. レビュー
  2. 理論と方法
  3. 適用事例

レビュー

Johnson, Paul E. 1999. "Simulation Modeling in Political Science," American Behavioral Scientist vol.42, no.10 : 1509-1530.
American Behavioral Scientist のシミュレーション特集号から。政治学の各分野でどのようにシミュレーションが適用されてきたかのレビュー。ちなみにこの特集号では他に社会学と経済学の各レビューも載っている。
Benoit, Kenneth, 2000. "Simulation Methodologies for Political Scientists," The Political Methodologist. vol.10, no.1, pp.12-16.
アメリカ政治学会方法論分科会のニューズレターにおける Computational Modeling 特集号より。主にゲーム理論や計量分析との比較から、ABM の利点をあげる。

理論と方法

Axelrod, Robert, 1997. "Advancing the Art of Simulation in the Social Sciences," Conte et al.(eds.), Simulating Social Phenomena, Springer-Verlag Berlin Heidelberg, pp.21-40. pp.21-40.
Axelrod を中心とした、KISS Pricnciple に基づくシミュレーション研究の基本的な考え方を解説。この立場では、より単純なモデル構築作りが志向される。最初に読む一本としておすすめ。
Axtell, Robert, 2000. "Why Agents? On the Varied Motivations for Agent Computing in the Social Sciences," CSED Working Paper No.17.
ABM には、Axelrod らを中心とする Michigan School と、Axtell や Epstein を中心とするBrookings Institution の試みがあるそうです。聞いた話では他にも 3 つ 4 つ大きな集団もあるのだとか。前者は、いわゆる KISS Principle に基づいて、なるべく単純明快なモデル作りをすすめ、後者はより作り込んだ、政策志向のモデル作りをしているそうです。この論文は後者の立場から、シミュレーション研究の中での ABM の位置づけを行っています。
Epstein, Joshua and Robert Axtell, 1996. Growing Artificial Societies : Social Science from the Bottom Up, Campridge, Mass.: MIT Press(服部正太/木村香代子,1999.『人工社会―複雑系とマルチエージェント・シミュレーション』共立出版).
視界と行動パターンを持ったエージェントと資源が配置された空間からなる Sugarscape というアリの社会のモデル/プログラムを基礎としている。章毎に、単純なモデルから徐々に複雑なモデルへと進みながら、その特徴と利点を示す。
Gilbert, Nigel and Klaus G. Troitzsch, 1999. Simulation for the Social Scientist, Taylor & Francis(井庭崇/高部陽平/岩村拓哉,2003.『社会シミュレーションの技法―政治・経済・社会をめぐる思考技術のフロンティア』日本評論社).
社会シミュレーションの目的とその意義を解説した後、今まで使われてきた手法を具体的なプログラムを交えながら解説する。初学者のためへの配慮か、数式やプログラムは読み飛ばしてもかまわないと書いてあるものの、そうしてしまうと少々物足りない気がしなくもない。何とか理解して読み薦めたいところ。
山影進・服部 正太、2002. 『コンピュータのなかの人工社会―マルチエージェントシミュレーションモデルと複雑系』(共立出版)
構造計画研究所がすすめているマルチ・エージェント・シミュレーター(MAS)に関するプロジェクトの研究成果。サンプルプログラムが収録された CD-ROM 付きで、実際にシミュレーションを体験できる。
出口弘、2000. 『複雑系としての経済学―自律的エージェント集団の科学としての経済学を目指して―』(日科技連出版社)
基本的に経済学に関する議論ですが、1-3 章では社会科学における ABM(としての複雑系科学?)の方法論的基礎づけを行っています。

適用事例

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Created on: 2002/09/02 12:45 JST